復活の六日市

著・佐々木大輔

安倍偉佐夫(以下、――) 「六日市」の復活を企画しているという藤原犬田老さんにお話を伺います。犬田老さん、今日はよろしくお願いします。

藤原犬田老(以下、藤原) よろしくお願いします。

――あらためてなんですが、「六日市(むいかいち)」とは何なのでしょうか。

藤原 遠野では昔、1と6のつく日に市が立ってとても栄えたという話が残っています。それを「一日市(ひといち)」とか「六日市(むいかいち)」といって、それが「一日市町」とか「六日町」という町名にもなっています。今このインタビューを受けている神明神社もその六日町なんですよ。

――六日市が最後に開催されたのは、いつ頃のことだったのでしょうか。

藤原 正確な時期の調べがつかなかったのですが、憶えている人を見つけられなかったということは、数十年前とかの話ではなく、もっともっと昔のことですね。歴史をたどれば、阿曽沼氏が松崎の光興寺から鍋倉山に城替えをした後、鍋倉城の正面、というのは今の遠野高校の裏手、合同庁舎のあたりなんですが、その近くで開かれたのが六日市であり、六日町です。
 それを後に、「もっと道を広く、馬が休みやすいように」ということで、現在の六日町通りに移しました。かつて六日町だった場所は、今では「元町」と呼ばれています。「元・六日町」だから「元町」というわけです。

――遠野高校の前の通りですよね。「もとまち」という小さなお店があって、高校生のころはよく授業を抜け出してお菓子を買いに行ってました。

藤原 『遠野市史』にある古い写真を見ると、道の真ん中に小さな川が流れていて、馬が水を飲んでいた様子を想像できます。ただ、その写真が撮影された時点でも、すでに六日市は開催されていなかったようなので、これは相当に古い話であるといえます。
 いざ六日市を復活させようと思っても、当時のことを知っている人は誰もいない。だから、あらたに人が集まるような何か新しい催しを考えようとしているところなんです。

――ところで、犬田老さんはなぜ、六日市を復活させようと思ったんですか?

藤原 遠野に来てから、卯子酉様や長作堤防のあたりを散歩していたときに、神明神社の境内にふらっと迷い込んだんですよ。そのときは裏手の方から入って、参道を下って「Z」があった場所につきました。このあたりの人は「キクチストア」と呼んでいたお店です。つまりみなさんがよく車で通っている六日町通りの裏に、参道を一本入るだけで、大木と芝生に囲まれた心地良い空間があることがわかって、すごく気に入ったんですよ。調べたら、その場所はかつてはゲートボール場だったり、相撲の土俵があったところ、それが今は芝生のような公園になっている。そこに敷物やタープを広げたりしながら、食事をしたりイベントができたら楽しそうだなと、そんな風に思ったんです。

――催し物については、何か考えていることはありますか?

藤原 市やマーケットというのは、人々が作っているものを持ち寄って取引をする、ということだと思うんですが、それを誰もができるようにアレンジして、「みんなが普段から家で食べているものを持ち寄る」そういうイベントをやってみたいんですよね。

――家庭料理のような?

藤原 そうなんです。みんなが日常的に食べている、名前があるようなないような食べ物を持ち寄る。しかも遠野の人だけでなく、遠く海外から来て遠野で働いてる方々もご招待して、ちょっと大きなホームパーティというか、文化交流会みたいなことができたら楽しそうだなと。身近な隣人のことって、意外とわからないでしょ。知り合える機会にできたらうれしいと思っているんです。

――そういえば、私の会社には技能実習生の方がいます。声をかけてみたいですね。

藤原 いいですね! 海外から遠野に来ている方がたくさん参加してくれたら、それは楽しくなりそうですね。

――犬田老さん、せっかくなんで、お神明さんの拝殿の方をちょっと開けて、中を見てみますか。

藤原 ありがとうございます。ぜひ拝見させてください。
 いやあ、中から見てみると想像以上に眺めがいいですね。戸を明け放って拝殿に立つと、二面に広がる芝生が見えて、ちょっとしたグリーンステージみたいですね。

――僕らが子どもの頃は、この場所でフットベースなんかをやってたんですよ。それに、その頃はまだ屋根がかかった土俵も残っていました。

藤原 拝殿の壁にかかっている記録を見ると、神明神社は岩手県南でも相撲が非常に盛んな場所だったということですね。過去に相撲大会で優勝した力士の名前が木札に書かれて壁にかけられていますね。「昭和六年相撲優勝者 嵐山 稗貫郡大迫町藤原喜八郎 」とある。

――そしたら、復活する六日市でもまた相撲大会をやるってのがいいんじゃないですか。この場所にぴったりですよ。

藤原 いい! 絶対やってみたい。

――ところで犬田老さん、これを実際に復活させるには、どうしたらいいんですか。仲間集めもやらないとですよね。

藤原 もちろん。きみも手伝ってくれるよね?